地産地消応援店舗取材「お好み焼き でん」キャベツの甘みが香る、絶品の大阪ソウルフード

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地産地消応援店舗(飲食店)

2020.08.01

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地産地消応援店舗取材「お好み焼き でん」キャベツの甘みが香る、絶品の大阪ソウルフード

今回ご紹介するのは、大阪市西成区にある「お好み焼き でん」です。下町情緒溢れるこのエリアは、串カツ、お好み焼き、たこ焼き……と“大阪ソウルフード”の名店がしのぎを削る激戦区。その中でも同店は2006年のオープン以来、常に高い人気を誇っています。

その秘訣は、外はカリっと、中がふっくらしたおいしいお好み焼き。

これまでメディアに多数取り上げられ、店主の田中さんはNHKの朝の連続テレビ小説「てっぱん」で、物語の重要な要素となるお好み焼きの監修を務めたことも。人気・実力ともにトップクラスのお店です。

 

ジューシーで、まるでフルーツ!採れたてのキャベツの甘みに感動

お好み焼きを作る上で一番重要な材料と言えば、やはりキャベツです。

同店では、市場を通して泉佐野市にある射手矢農園の松波キャベツを仕入れています。

そもそも田中さんが射手矢農園と出会ったのは12年前のこと。店主の田中さんが知人を通して射手矢農園を知り、実際に畑を訪れたのです。その際、採れたてのキャベツを食べて感動したそう。

「あの時、一口食べて『これは野菜じゃなくてフルーツや!』と感じました。とにかく、めちゃくちゃ甘くてジューシーなんです! 茎の切り口から水がぼたぼた滴るくらいしっかり水分を含んでいて、一枚ずつ葉をはがすとパリッパリッとした感覚がありました。食感も味も良く、マヨネーズやドレッシングをつけなくてもいくらでも食べられる。同じ松波キャベツでも、産地が違うとここまで味が違うだと驚きました」

そこで、さっそくお店で射手矢農園のキャベツを使うことに。すると、お好み焼きの味にも変化が生まれたと言います。

「キャベツは加熱すると糖度が上がります。射手矢さんのところのキャベツは、焼いた時、生地にふくよかな甘みがでて味に広がりが生まれるんです。基本的にお好み焼きは、マヨネーズ、ソース、生地が三位一体となることが肝心で射手矢さんのキャベツはうちのマヨネーズやソースとも相性が良く、キャベツを変えることでお好み焼き全体の味のグレードが上がりました」

この日、用意してくれたキャベツも、もちろん射手矢農園のもの。大地の栄養をしっかり吸収しているため、スーパーなどで販売されている一般的なものよりも大きいサイズになっています。

また他に、大阪産のほうれんそう、きくな、ニンジンをご用意くださいました。

では、さっそくこれらの野菜を使った料理をご紹介しましょう。

マヨネーズとソース、そして生地が見事に調和した、人気店の味を堪能

まず、1品目は「すじコンネギ玉」850円(税抜き)です。

キャベツ、卵、てんかす、紅ショウガ、ネギを混ぜた生地をアツアツの鉄板にのばし、その上に自家製の牛筋をのせます。裏面に火が通ったら、ひっくり返し表面にも火を入れて……と、通常ならこれで完成させる店が多いと思うのですが、同店ではさらにもう一度裏面、表面とひっくりかえして火を入れます。

強火で一気に仕上げるより、弱火で裏、表、裏、表とゆっくり熱を入れることで、外はカリっと中はふわっとした仕上がりになるんです」

地産地消応援店舗取材「お好み焼き でん」キャベツの甘みが香る、絶品の大阪ソウルフード photo 1

焼き上がったらソースを塗って、上から目玉焼きをトッピング。さらにたっぷりとネギをのせ、最後にマヨネーズをかけます。ネギの上にマヨネーズをかける光景は、まるで草原に雪が舞い落ちるよう。アツアツの鉄板がジュージューと音を立て、食欲をかきたてられます。

ネギのシャキシャキ感と、卵のとろみ、そしてふっくらとした生地のバランスが絶妙。こだわりのソースとマヨネーズの風味が生地にじんわり馴染み、キャベツの甘みもいい具合に調和しています。

ホクホクのジャガイモととろーりとろけるチーズが最高!

続いては、「じゃがチーズ」480円(税抜き)です。

ホクホクのジャガイモに、塩コショウで味付されたホウレン草と、ベーコンが加わり彩りもとっても豊か。アツアツの鉄板の上でグツグツとろけるチーズからは濃厚な香りが漂い、見ているだけでもおいしそう。それぞれの野菜をとろりと包み込み、コクのある口当たりに仕上げてくれます。

大阪産の牛肉の濃厚な旨みとともに

続いては、「なにわ黒牛のハンバーグ」1060円(税抜き)と「春菊と海老のオリーブオイル炒め」(期間限定メニュー)です。

同店では、全国各地から選りすぐりの食材を取り寄せており、牛肉は大阪産のなにわ黒牛を使用しています。希少な純粋黒毛和牛であるなにわ黒牛は、ミンチの一粒一粒にしっかり旨みが詰まり、アツアツの鉄板にのせると肉汁がじゅわーっと溢れます。しょうゆベースの自家製ダレをかけると、上質な脂の甘みとまろやかな旨みがさらに倍増。肉質の良さが一層際立ちます。

また、春菊と海老のオリーブオイル炒めは、プリっとした食感のエビに春菊のほろ苦さがベストマッチ。春菊の苦みが料理全体に深みを与えてくれています。

大阪産の牛肉の濃厚な旨みとともに

そして最後は、「お好み焼き」に継いで人気を誇る「塩そば(ごましそかけ」890円(税抜き)です。

同店では、ラーメンダレ、生醤油の焼うどん、塩焼きそば……など他店ではお目にかかれない珍しいテイストの焼きそばがメニューに並びます。しかも、麺は特製の生麺を使用。注文が入ってからゆがくため、独特のしなやかな食感を味わうことができるんです。

田中さんが「焼きそばというより、焼きパスタという感じですね」とおっしゃる通り、鉄板で炒めた後、最後にオリーブオイルで仕上げる様子はイタリア料理さながらです。

さらに、注目したいのは自家製の塩ダレをかけたあとの調理法。なんと、鉄板の上で勢いよく麺をくるくる回すのです。お客さんから、野球の野茂茂雄投手の投法にちなんで「トルネード焼き」と呼ばれているそう。こうすることで、麺にタレをなじませているのです。

アツアツの鉄板の上でいい香りが立ち上り、塩ダレがしっかりコーティングされた麺と、甘みのあるキャベツ、そしてシャシャキシャキとした食感のもやしが絶妙のハーモニーを奏でます。それをいい具合にサポートしてくれるのが、仕上げにたっぷりふりかけられた白ごま。豊かな風味がふっくら口に広がり、なんとも言えない味わいです。

あっさりした味付けなので、いくらでも食べられそう。贅沢に10枚も使った大葉が上品な後味にまとめてくれます。

これからの農業のために飲食店が一緒になってできることを

現在、同店では射手矢農園以外にも、富田林市のアーバンファームASAOKA、貝塚市の北野農園などとも繋がりを持つ他、全国の生産農家とも連携し、野菜のブランド化などに取り組んでいます。

その経緯について田中さんに伺うと、

「やはり射手矢農園さんとの出会いがきっかけです。正直、それまでは野菜と言えば店に届くものを使うという感覚で、作り手の方々と顔を合わせることはありませんでした。しかし、キャベツの仕入れを通して、生産者さんの存在を身近に感じるようになったんです」と話してくれました。

地産地消応援店舗取材「お好み焼き でん」キャベツの甘みが香る、絶品の大阪ソウルフード photo 2

この出会いをきっかけに、射手矢農園ではことあるごとに「うちのキャベツをおいしく食べるなら、西成区にあるお好み焼き店『でん』へ」と紹介してくれたそう。そのことを知り、田中さんは、「広告を出したり、ランチ営業をしたりしてお客さんを集めるより、まずは生産農家に認められる店を作ろう!」と考えるようになったそうです。

そして、生産の様子を知り、野菜の知識を高めるため、それまで行っていたランチ営業をやめ、その時間を使って畑を訪ねるようになったのです。

生産の現場で田中さんが目にしたのは、自然と向き合い生産に励む生産農家の人々の姿でした。時には、台風でビニールハウスが大きな被害を受け、農作物を全て破棄するような状況も。一次産業の厳しさを目の当たりにした田中さんは、次第に「1次産業から3次産業まで、全ての人が助け合える関係作り」を目指すようになり、農作業の繁忙期など、それまで以上に畑へ足を運んで自ら手伝い、店舗のスタッフも連れていくようになったそうです。

「生産農家に認められる飲食店」から「後押しできる存在」へ

さらに活動は、大阪に留まらず全国へ。いまや北は北海道、南は西表島と、まさに全国に広げています。

なかには、東北の地震や津波、熊本の地震をきっかけに、現地の生産農家の野菜を積極的にお店で使い、そのおいしさをお店で発信したことも。田中さんの活動は「旅サラダ」などのテレビ番組に取り上げられ、野菜のブランド力向上にも一躍買っています。

そんな中で、田中さんの心境にも変化が生まれたそう。

「当初は『生産農家に認めてもらえるお店に』という思いが原動力でしたが、次第に『店の営業を通して生産農家を応援したい』と考え方が変わってきたんです」

そのため、「でん」ではお好み焼きの味を褒められると、いつも「野菜がおいしいから、お好み焼きがおいしいんです」と返答しているそう。おかげで、「でん」=野菜がおいしいというイメージが定着し、「もっと野菜を食べたい」というリクエストから「野菜の盛り合わせ」というメニューが誕生したほど。自店の営業を通して、野菜の価値をしっかりアピールしています。

現在も、良質な食材を求めて各地へ出向く田中さん。その際は、必ずソースを持参し、生産農家とお好み焼きパーティーを開催するのだとか。「一緒に食べて話をすれば自然と打ち解けます。交流を図りながら、『店の営業を通して生産農家さんを応援したい』という思いを伝えるんです」。

田中さんに、生産農家と飲食店の関係について伺うと、

「以前、キャベツが大量に生産され1玉20円で販売されるような事態が起きていました。私はなんとか適正価格で売れるように、市場や流通の仕組みを変えていかなければならないと思うんです。その一つとして、飲食店が適正価格で仕入れることも大切。一円でも安く仕入れようと買い叩いてばかりでは、生産農家は衰退する一方です。もちろん、適正価格で購入すれば、通常700円の豚玉が1000円に値上がりするかもしれません。でも、お客様に『それでも食べたい』と思っていただける店を目指したらいいと思うんです。今のままでは生産農家にばかり負担がかかり、後継者が育たない。このままでは、我々飲食店も商売できなくなって共倒れしてしまいます。生産農家のブランド力を上げるため、飲食店が一緒になって努力をしていくべきだと感じています。」と共存共栄の大切さを話してくださいました。

また、生産農家とのつながりが、同業者同士の関係にも良い影響を及ぼすとか。

「お好み焼き屋が集まってお好み焼きのことを話すとどうしても競争になります。でもおいしいキャベツの話題になると、話は別です。いい食材がほしいのは、どこでも一緒。ですから自ずと協力体制が組めるんです」

実際、田中さんが所属する「満月の会」では、毎月満月の日にお好み焼き店が集まり、エビやキャベツなど、テーマとなる食材を使ってお好み焼きを作るそう。「生産農家を応援しよう」という目的があれば、同業者間でも自然と繋がりが生まれると言います。

斬新な視点で新しい農業のカタチを

田中さんは今後、生産農家に対してさらなるサポートを考えています。

「将来的には、農業が“儲かる職業”となるサポートをしたいと思っています。の生産農家さんは、365日ほぼ休みなく働くのが当たり前になっているし、自然相手のため天候被害によるリスクも大きい。だけど、例えば、短時間で気軽にアルバイトできれば、若い人がちょっとした空き時間を使って手伝いにきてくれるかもしれません。そうすれば、作業効率が上がり、生産力も高まるんじゃないかと思うんです。

また、飲食店が一緒になって野菜をブランド化するという方法もあります。例えば射手矢農園のキャベツを『お好み焼き専用キャベツ』として販売したら、興味を持ってくれる人が出てくるかもしれません。大手の飲食店や名店の料理人さんみたいな影響力のある方がそういう動きをしてくれたら、日本の農業はもう少し変わっていけると思うんです。」

おいしい野菜と、確かな技術力、そして生産農家への愛情。これが、同店のお好み焼きのおいしさの秘訣なのでしょう。

皆さんもぜひ一度お店を訪ね、その味を確かめてみてください。

【でん】

住所:大阪市西成区鶴見橋1-5-18

電話番号:06-6646-6878

アクセス:大阪市営四つ橋線花園町駅下車 徒歩2分

営業時間:17:00〜24:00(L.O.23:30)

定休日:不定休

総席数:32席

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