地産地消応援店舗取材「島之内フジマル醸造所」ぶどうの名産地・大阪の伝統を伝える都市型ワイナリー

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地産地消応援店舗(飲食店)

2020.03.11

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地産地消応援店舗取材「島之内フジマル醸造所」ぶどうの名産地・大阪の伝統を伝える都市型ワイナリー

今回ご紹介するのは、大阪市中央区にある「島之内フジマル醸造所」です。一般的に「醸造所」というと、自然豊かな環境に囲まれた一面ぶどう畑の風景を思い浮かべると思いますが、同店はそんな固定概念を覆す、国内でも珍しいお店の中にある「都市型ワイナリー」なのです。

こちらの会社では「ワインを日常に」をコンセプトにしており、1階でワインを醸造し、2階のレストランでは、ワインと料理を提供しています。

1階の醸造所は室内が常時15℃に保たれ、さまざまなワインが仕込まれています。醸造所内は、作業中以外はいつでも見学可能。特に8~11月末の間であれば、ワインの発酵風景を間近に見ることも。通常なら郊外に行かなければ見れない風景を、大阪市内で気軽に楽しむことができます。

醸造所の上部に当たる2階のレストランには、醸造所で作られたワインが常時4~5種ほど揃い、その他の産地のものも豊富にラインナップ。多彩な味わいを楽しむことができます。

耕作放棄という課題解決に新たなアプローチを

同店が市街地でワイン醸造所を始めたきっかけは、2010年に大阪府柏原市でぶどう栽培を始めたことから始まります。

店長の河端さんによると、

「大阪はぶどう栽培で120年もの歴史を持ち、一時は生産日本一に輝いたこともある土地です。100年以上の歴史を持つ柏原市の『カタシモワイナリー』をはじめ、数々のワイナリーが素晴らしいワインをたくさん生み出してきました。しかし、都市化に伴う農地の宅地化、農家の高齢化などの問題で、耕作放棄地が増えることに。消えゆくワイン産地の現状を知り、同じ業界に身を置く私たちが少しでも役に立てることはないか……と考え栽培に携わることにしました。

当初は、そこまで広い敷地ではありませんでしたが、徐々に栽培面積が増え現在は2haほどの畑でぶどうを栽培しています。

栽培している品種は、デラウェア、巨峰、マスカット・ベリーA、メルローなど。収穫高が増えるにつれ自社で醸造所を持つ必要性が生まれ、建設を検討するようになりました。ただ、畑に一から醸造所を建てるとなるとかなりの費用がかかりますし、賃貸にしても柏原市界隈では物件数が限られます。そこで発想を転換し、物件の豊富な大阪市内に醸造所となる建物を借りようということになったのです」とのこと。都市型ワイナリーは、こうした経緯を経て誕生したのでした。

同じ品種でも方法によって出来上がるテイストはさまざま

柏原市にあるぶどう畑では、毎年8月中旬から終盤にかけてデラウェアや巨峰を、また9月以降はメルローやマスカット・ベリーAを収穫します。同じ品種のぶどうでも、仕込み方や熟成に用いる容器、出荷時期を変えることでさまざまなテイストを表現できるそう。そのため熟成の容器も、ステンレスタンク、オーク樽、また“ワイン発祥の地”と呼ばれるコーカサス地方のジョージアという国から輸入したクヴェグリ(甕)など数種類を使用しており、瓶詰後も何度かテイスティングしながら出荷時期を検討します。

生産から加工、そして流通・販売新しい経営手法によって目指すものとは

ぶどう栽培にはじまり、ワイン醸造、そしてレストラン経営と、一次産業から三次産業まで全工程を自社で行う同店。その経営手法には、メディアをはじめ多くの人から注目を集めています。

「大阪と言うと、どうしても“商いの町”というイメージが強く、農業、製造業に関する認知度が高くありません。ましてや大阪でワインを作っていることは大阪府民ですら知らない方がおられます。

しかし、数々のワイナリーさんがこの地で代々歴史を築いてこられました。その姿を見ると、大阪がぶどう栽培に適している何よりの証拠だと思うのです。私たちは、当店の存在を通して“大阪=ワイン産地”の知名度を高め、ワイン文化の底上げに努めたいと考えています」

地産地消応援店舗取材「島之内フジマル醸造所」ぶどうの名産地・大阪の伝統を伝える都市型ワイナリー image 1

大阪市内にてイタリア野菜の試食会

島之内フジマル醸造所は店舗運営にとどまらず、地域を通じ地元食材のPR活動にも積極的に取り組んでおられます。

その一環として、令和元年11月20日(水)、JA大阪市本店にて【大阪市内の農家が作ったイタリア野菜お披露目ライブキッチン】と題して、大阪市内の飲食店関係者を対象としたイタリア野菜試食イベントが行われました。

本イベントでは、「島之内フジマル醸造所」を運営する株式会社パピーユの藤丸智史代表より冒頭挨拶として、イタリア野菜や地元食材に対する熱い思いを語っていただきました。

その後、「島之内フジマル醸造所」の岡シェフによるイタリアン野菜を使った試食会が行われ、大阪市内で栽培されたイタリア野菜の特徴や美味しく調理するポイント、素材の良さ、魅せ方について講習をしていただきました。岡シェフからは「見た目がきれいなものではなくても、調理の仕方によっては使えるものがたくさんある。食品ロスの観点からも飲食店として仕入れたものは全部使い切りたい」と農産物に対する熱い思いを語っていただきました。また、参加した飲食店関係者からも「イタリア野菜の調理方法について深く知る良い機会となった。今後、自分の店でも試してみたい」と話していただきました。

海老芋のなめらかなくちどけに感動!前菜としていただくパンナコッタ

同店の料理は、イタリアンを中心にいずれも地元食材をふんだんに使ったものばかり。本日はその中から2品の料理をご紹介しましょう。

まず一品目は、海老芋のパンナコッタ 600円(税別)です。

こちらの料理に使われる海老芋は里芋の一種で、ねっとりとしたくちどけが特長です。

同店では、名産地・富田林にある乾農園(やるやん!大阪農業乾農園記事URL)から毎年仕入れているそう。その理由について、シェフの岡さんに聞くと、「ここの海老芋は、東京や京都の料亭もこぞって取り寄せる一級品です。理由は、なんといっても味が濃いこと。野菜は本来、水分量が少ないと味が濃いのですが、そうなると海老芋特有のねっとり感が少なくなることがあります。こちらの海老芋は味が濃くて、ねっとり感も格別。料理にした時にしっかり存在感を出してくれるため、毎年必ず使いたい野菜の一つです」と教えてくれました。

「パンナコッタ」とはイタリアの言葉で、「パンナ」は生クリーム、「コッタ」は煮込むという意味。生クリームを煮込んだところに卵白を入れ、湯煎して作ります。同店のパンナコッタも、海老芋と生クリームでポタージュを作り、そこに卵白を流し込んで湯煎するそう。完成した料理は、ねっとりとして海老芋のペーストを食べているような食感。ほのかな海老芋の甘みを、生クリームやナツメグが絶妙のバランスで支えてくれます。

一見スイーツのように見えますが、実は前菜として味わうのが正解。まろやかな味わいが、料理への期待を一層高めてくれます。

調理前のひと手間で天王寺蕪が見違えるほどにやわらかく

続いては、天王寺蕪のロースト 柚子とボッタルガのソース 980円です。(常時メニューではございません)

天王寺蕪は、概ね100年前から大阪府内で栽培されてきた「なにわ伝統野菜」の一種。大阪市天王寺付近が発祥と言われ、純白の根は甘味が強く、きめ細やかな肉質が特長です。

地産地消応援店舗取材「島之内フジマル醸造所」ぶどうの名産地・大阪の伝統を伝える都市型ワイナリー image 2

「通常の蕪に比べやや食感がしっかりしているため煮崩れしにくく、表面にサッと火を通すとシャキシャキした歯応えがあっておいしいんですよ。なにわ伝統野菜は、難波葱にしても天王寺蕪にしても、一般的に出回っている葱や蕪と比べ個性があり、慣れていない方はどう調理したらいいか戸惑うかもしれませんが、それぞれの特性を理解すれば家庭でもいろんな料理に活用することができます。例えば、この天王寺蕪ならさっき話した通り加熱してから調理するのがポイント。ピクルスなどの場合、マリネ液を加熱して漬けるなど温かい状態で調理するとしっかり味がしみこみます」と岡さん。

今回提供くださった「天王寺蕪のロースト 柚子とボッタルガのソース」も、ローストする前にまずさっと20秒程度湯通ししています。

「こうして蕪の表面の組織を膨張させるんです。組織が開くと、味がしみこみやすくなるとともに、適度に水分が抜けて味が濃くなります」

その後、少量のバターでローストします。バターのまろやかな香りが漂い、真っ白な蕪に香ばしい焼き目がつく様子は見ているだけでおいしさが伝わってきます。

仕上げに、柚子皮と果汁で作った黄色いソース、蕪の葉をペースト状にした緑色のソース、その上からボッタルガ(からすみ)をかけてお皿を彩れば完成です。

冷たい野菜はなかなかたくさん食べられませんが、このように温かく調理した季節野菜ならいくらでも食べられそう。旬のものは体が欲していると言いますから、栄養をしっかり与え健康にも効果が期待できそうです。

地元野菜とワインのマリアージュベストマッチを見つける秘訣とは?

これら2種の料理とワインの関係性について尋ねると、「海老芋のパンナコッタ」は、表面にトッピングされたクルミやカカオニブに合わせて少々軽い赤ワインか、もしくは、海老芋のねっとりとしたくちどけに合わせて白ワインを。また、「天王寺蕪のロースト 柚子とボッタルガのソース」は、スッキリとしたフレッシュな白ワインを勧めてくれました。

「料理とワインはお客様の好みに合わせてさまざまなマリアージュが考えられます。ただ、同じ土地でできたものは風土が似ているのでやはり方向性が一緒。自然とお互いの味がしっくり寄り添ってくれるんです」と岡さん。

柏原産のぶどうで作った同店のワインと、新鮮な地元食材をふんだんにつかった料理たちは、大阪の大地の恵みをしっかり受けて育ったもの同士。ぜひ絶妙なマリアージュを味わいにお店を訪ねてみてください。

【島之内フジマル醸造所】

住所:大阪市中央区島之内1-1-14 三和ビル1階

電話番号:06-4704-6666

アクセス:地下鉄堺筋線長堀橋駅 徒歩7分

地下鉄長堀鶴見緑地線松屋町駅 徒歩2分

営業時間:13:00~23:00(L.O. 22:00)

定休日:火・水曜

総席数:31席

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  • 2020.03.11

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